
こんにちは、グロースファミリーハウス工務設計チームの中嶋です。
先日の休みに、友人と奈良県宇陀市にある『 奈良カエデの郷ひらら 』へ行ってきました。
廃校になった木造校舎を活用した施設で、どこか懐かしさを感じる雰囲気が魅力のスポット。
実は以前からSNSで見かけて気になっており、いつか行ってみたいと思っていた場所のひとつでした。

この校舎は、2006年に閉校した菟田野町立宇太小学校。
現在目の前にある建物は、1935年に再建されたもので、築100年近くの歴史を刻んでいます。
いざ中へ入ろうとしたそのとき、ちょうど校舎から出てきた一人のおじいさんに出会いました。
「 懐かしくて、すごくいいよ! 」
と、満面の笑みで大絶賛。

その一言に、この場所がただの「 古い建物 」ではなく、誰かの大切な記憶が詰まった場所なのだと感じさせられました。
きっとこのおじいさんが学生だった頃も、今と変わらない風景が広がっていたのでしょう。
長い年月を経てもなお、変わらずそこにあり続ける校舎。
その佇まいに、どこか温かさと懐かしさを感じながら、ゆっくりと足を踏み入れました。

木造校舎には、コンクリート造にはないやわらかな温もりがあります。
廊下を歩くと床がわずかにきしみ、その音さえも心地よく、建物が呼吸しているように感じられました。
経年変化を重ねた木材は一つとして同じ表情がなく、その“ゆらぎ”が空間に深みを与えています。
木の香りや手触りといった五感に響く要素も魅力で、自然に包まれるような安心感がありました。
時間を重ねた素材だからこそ生まれる価値を、あらためて実感しました。

正直なところ、木造校舎は断熱性や耐久性の面で、冬の寒さや維持への不安を感じる部分もあります。
ただ、そうした不完全さも含めて「 時間の蓄積 」として受け取れるのが、木造建築の魅力だと感じました。
長い年月を経て多くの人が過ごしてきた空間には、目に見えない記憶や物語が丁寧に積み重なっています。
ただ機能を満たすだけの建物ではなく、人の営みとともに育まれてきた「 価値 」が、そこには確かに息づいていました。

教室の中は施錠されており見学はできませんが、各教室はレンタル利用が可能とのことです。
近年は映画や写真撮影のロケ地として活用される機会も増えているそうです。
実際に朝ドラの撮影にも使われたという話を聞き、外から眺めるだけでもどこか既視感のある、印象的な空間に感じられました。
長い年月を経た木造校舎ならではの質感や光の入り方が、映像表現にもよく馴染むのだと建築的な視点からも納得できる魅力がありました。

古い学校には、時間が丁寧に積み重なったからこそ生まれる独特の空気感があります。
校舎や廊下、教室の一つひとつに確かな歴史が刻まれており、その場に立つだけで自然と想像が膨らみます。
「 ここでどれだけ多くの人が学び、過ごしてきたのだろう 」と思いを巡らせる時間もまた、この場所の魅力のひとつ。
建築としての役割を超え、人の記憶とともに存在し続けてきた空間であることを、静かに感じさせてくれました。

当時この学校に通っていた生徒たちが制作した作品も多く残されており、その一つひとつから当時の空気感が伝わってきます。
残された備品や掲示物も含めて、約100年にわたる時間の積み重ねを感じられるのがとても印象的でした。
どんな思いで作られ、どんな日常がここにあったのかと想像が広がり、空間そのものが語りかけてくるようです。
まるでその時代にそっと入り込んだかのような、不思議で心地よい感覚を味わうことができました。

もともとはカフェを目的に訪れたのですが、気がつけば旧校舎の空気に引き込まれ、思いのほか長い時間、その雰囲気を味わっていました。
実は、私の地元にあった小学校や中学校も、少子化の影響で数年前に閉校しています。
使われなくなった建物が静かに時を止めてしまうのは少し寂しいものです。
ただ、こうして誰もが訪れ、活用できる場所として新たな役割を持つことで、建物の価値はまた違った形で受け継がれていくのだと感じました。
この校舎のように、人の記憶とともにあり続けながら、次の世代にも開かれた場所として活かされていく。
そんな在り方が、これからの建築には求められているのかもしれません。

奈良カエデの郷ひららは、「 ワールドメイプルパーク 」とも呼ばれているそうです。
国内はもちろん世界各地から集められた約1200種、約3000本もの楓が植栽されています。
その収集量や希少品種の多さは日本一とも評されており、まさに楓の魅力を存分に体感できる場所です。

一般的に楓といえば秋の紅葉を思い浮かべますが、ここでは春から初夏にかけてが最も美しい季節とされています。
新緑のやわらかな色合いや、品種ごとに異なる葉のかたちや質感が際立ち、同じ楓でもこれほど多様な表情があるのかと驚かされます。
季節の移ろいを繊細に映し出すその景色は、訪れるたびに新しい発見を与えてくれる魅力にあふれていました。

一つひとつの樹木には丁寧に名前のプレートが付けられていましたが、見慣れない品種ばかりで、その多様さに驚かされました。
なかには芸能人が植樹を行った木もあるそうで、この場所が多くの人に親しまれていることが伝わってきます。
この日はよく晴れた穏やかな気候で、一面に広がる楓を眺めながら、ゆっくりとカフェへ向かいました。
やわらかな光に包まれた園内はとても心地よく、自然の中を歩く時間そのものが贅沢に感じられます。
また、奈良カエデの郷ひららでは、予約制でバーベキューを楽しめたり、宿泊施設も併設されています。
なので、自然と建築、そして人の時間がゆるやかに重なり合う、そんな居心地のよい場所でした。

目的のカフェ『 カエデ 』に到着。
こちらも旧校舎をリノベーションした空間で、学校らしい面影を随所に感じることができます。
建具や素材の一部には当時のものが活かされており、木の質感やスケール感がそのまま残されているのが印象的でした。
一方で、照明や家具は現代的に整えられており、懐かしさの中にさりげなく新しさが溶け込んでいます。
ただ食事やお茶を楽しむだけでなく、その場所が歩んできた時間や空気感も一緒に味わえること。
既存建物を活かすリノベーションならではの価値を、あらためて感じるひとときでした。

店内も、一般的なカフェとはひと味違う特別な雰囲気が広がっていました。
席には学校で使われていた机や椅子がそのまま活用されており、どこか懐かしく、不思議と心がほどけていくような感覚になります。
入店した時点ですでに満席で、少し待つことに。
店内を見渡すと、子ども連れのご家族や若い女性、ご年配のご夫婦まで、世代を問わず多くの方が訪れていました。
それぞれが思い思いにこの空間を楽しんでいる様子からも、この場所が幅広い人に愛されていることが伝わってきました。

順番を待つ間、カフェに隣接したお土産コーナーをのんびりと見て回りました。
宇陀市の特産品をはじめ、やはり「 カエデ 」にちなんだお菓子やメープルシロップ、雑貨などが並び、見ているだけでも楽しい空間です。
パッケージもどこか素朴で温かみがあり、この場所の雰囲気とよく馴染んでいるのが印象的でした。
メープルシロップにも惹かれつつ、「 また来たときの楽しみにしようかな 」と思い、今回はあえて手ぶらで帰ることに。
そんな余白も、この場所らしい過ごし方のひとつに感じられました。

閉校時に使われていた下敷きや、当時の写真も残されており、思わず足を止めて見入ってしまいました。
そこに写る風景や人々の姿から、この校舎が歩んできた時間の重みを静かに感じることができます。
当時この学校に通っていた生徒や先生たちも、まさかこの場所がカフェとして生まれ変わるとは・・・。
そして、再び多くの人で賑わうとは想像もしていなかったのではないでしょうか。
閉校後にそのまま取り壊すのではなく、こうして新たな役割を与えて再生するという選択。
その発想には、建物の価値を未来へつなげていこうとする意思が感じられ、建築に携わる立場としてもとても印象に残るものでした。

ようやく順番が回ってきて、席に着くことができました。
実は、毎月第二日曜日と第四日曜日には、30食限定で内容が変わる「 給食ランチ 」が提供されていると聞きました。
せっかくなら味わってみたいと思い、この日に合わせて訪れました。
しかし、残念ながら、到着した時にはすでに完売。
人気の高さを実感しつつ、今回は通常メニューの中から選ぶことにしました。
それでも、この場所でいただく食事には特別な意味がありそうで、どんな一皿が運ばれてくるのか、自然と期待が高まります。

ランチメニューは、「 煮込みハンバーグ 」、「 ロコモコ丼 」、「 ひららんち 」、「 カレーライス 」の4種類。
どれも魅力的で、思わず迷ってしまいます。
通常メニューとはいえ、見た目からしっかりと手が込んでいるのが伝わってきて、どれを選んでも満足できそうな印象でした。
この日はしっかりお腹も空いていて、どちらかというとお肉をがっつり食べたい気分。
こういうときのメニュー選びは、うれしい悩みでもあります。

私がオーダーしたのはひららんち。
運ばれてきた瞬間、想像以上に唐揚げのボリュームがあり、思わず得した気分になりました。
フライドポテトやサラダ、小鉢も付いていて、バランスの良い内容です。
薄めの衣で揚げられた唐揚げは、外はさくっと軽やかで、なかはとてもジューシー。
一口かじると肉汁がじわっと広がり、ご飯との相性も抜群でした。
見た目以上の満足感があり、しっかりとお腹も満たされる一皿です。

友人が選んだのはロコモコ丼。
大きなハンバーグに、つややかな半熟の目玉焼きがのった一皿で、見た目からして食欲をそそられます。
一口もらいたくなるような魅力的なビジュアルで、思わず目を引かれました。
友人いわく、ハンバーグはとてもやわらかく、しっかりとした食べ応えがありながらも重たすぎず、最後まで美味しく食べられたとのこと。
見た目の満足感だけでなく、味わいのバランスも整った一品のようでした。

給食の雰囲気に惹かれて、追加で揚げパンも注文しました。
「 シュガー 」、「 ココア 」、「 きなこ 」の3種類から選べるのですが、今回はココアをチョイス。
実は学生時代に給食で揚げパンを食べたことはありません。
しかし、不思議とどこか懐かしさを感じる味わいで、空間の雰囲気とも相まって、より一層その世界観に浸ることができました。
食事はもちろんのこと、空間そのものを楽しめるのがこの場所の魅力。
カフェとしての満足度も高く、心まで満たされる時間となりました。
次こそは、念願の給食ランチを目当てに、また訪れたいと思います。

歴史ある木造校舎の魅力と、新たな活用によって生まれた心地よい空間。
そのどちらもを体感できる奈良カエデの郷ひららは、ただ訪れるだけでなく、時間の流れや建物の価値について改めて考えさせてくれる場所でした。
日常から少し離れて、ゆったりとした時間を過ごしたいときにぴったりのスポット。
季節ごとに異なる表情を見せてくれる楓の風景とともに、ぜひ一度足を運んでみてはいかがでしょうか。

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